治療はまず、お薬によるものが一般的で、これは三叉神経痛と同様です。種々の抗けいれん剤が使用されることが多く、これでけいれんが安定すればOKです。しかし、三叉神経痛同様、お薬でコントロール困難な場合や、お薬が徐々に効かなくなる事例があり、そのような場合は、ボツリヌス菌注射、外科的手術 (MVD)が行われることがあります。ボツリヌス菌注射は低侵襲で、3-4ヶ月ごとに行う必要があるものの、高齢な方や手術はどうしても・・・という方には良い治療法と思われます。ただ、上述のように、顔面けいれんの原因の多くが動脈の神経刺激であることを考慮すると、根治という観点からは手術も有効な手段であることは間違いないと思います。
三叉神経痛の項でも記載しましたが、当施設では2015年以降MVDを始めました。この手術ではすぐそばに聴神経があります。聴神経は牽引など機械的な刺激に弱いため、ABR(聴神経モニタリング)というものが必須です。当施設ではこれらのモニタリングもすべて可能とし、可能な範囲で安全に配慮しつつ手術を行っています。更に顔面けいれんでは、顔面神経の分枝を電気刺激すると、他の顔面神経分枝も興奮し筋肉が収縮するという現象が見られ (abnormal muscle response: AMR)、これをモニターすることで(100%ではありませんが)、手術の効能をある程度術中に評価することができ、それらもおこなっています。ただ、三叉神経痛に比べると、顔面けいれんは術後すぐにけいれんが消失しない事例もあり、当院でも最も長い患者さんで、術後徐々にけいれんが軽快し、1年で完全消失したケースも経験しています。なぜそうなのかわわかっていませんが、手術を受ける患者さんには、「けいれんがすぐ消えなくても、1年は経過を見て下さい」と説明しています。
(以上は、金芳堂 脳神経外科学 改訂12版 Ⅲを参考にしています)